〈新春対談~2021年にさらなる飛躍を〉【サッカー・韓浩康 × ビーチバレー・黄秀京】


“W杯の舞台で可能性を”/“世界へとつながる「架け橋」に”

〈新春対談~2021年にさらなる飛躍を〉では、昨季にJ3 優勝とJ2昇格を経験し、J1・横浜FCへの移籍を果たした韓浩康選手(27歳)、昨年2月の6人制男女混合バレーボール世界大会に在日同胞選抜チームの中心メンバーとして出場した、在日同胞初のプロビーチバレー選手である黄秀京さん(36)が出演。2020年の活動を振り返り、新年の意気込みを語ってもらった。



【韓浩康(27歳)】186cm、80kg。京都中高-朝鮮大学校・外国語学部-モンテディオ山形(J2、2016年)-ブラウブリッツ秋田(J3、2016-20年)-横浜FC(J1、2021-)。J3リーグ通算 93試合7得点。

【黄秀京(36歳)】Vリーグ(バレー)、JBVツアー(ビーチバレー)で初の朝鮮籍選手として活躍。東京第4初中-大阪朝高-日本女子体育大学-GSSサンビームズ(2006-09年度)-栗山米菓Befcoビービースターズ(2010年)。12年にビーチバレーに転向し、18年に現役引退。現在、ビーチバレーコーチ、ピラティス体幹インストラクター、東京朝高バレー部コーチ、朝大非常勤講師として活動。在日本朝鮮人バレーボール協会理事。


Q.昨年はお二人にとって、どのような1年でしたか?


:昨年のハイライトは、昨年2月に千葉で行われた6人制男女混合バレーボール世界大会に、同胞選抜チームを組んで初めて出場したことでした。自分が関係者とつながりがあったことで大会出場に至りましたが、これまで誰も参加したことのない「世界大会」とあって、当初は周囲から懐疑的な意見も聞かれました。それでもどうにか、在日本朝鮮人バレーボール協会の協力のもとで、東京、大阪、兵庫の一般選手、朝大生、朝高生らで同胞選抜チームを構成し、2つのカテゴリー(身長185cm以下、出場選手の合計年齢220歳以上)に出場。前者のカテゴリーでは2位の成績を収めることができました。無から有を生み出すことは難しいですが、最終的には今後につづく道を作ることができたと思います。

大会における最大の成果は、各国の選手たちに「在日朝鮮人」の存在を知ってもらえたこと。それに、学生主体となった185cm以下チームが決勝で敗れ、涙する姿を見て、バレーに対する熱い思いを知ることができたのも印象深いシーンとして残っています。ここ数年間で、一番満足感を得られた瞬間でした。


:私は5年目となるJ3の舞台で、リーグ優勝とJ2昇格を成し遂げられました。シーズン29試合出場で6ゴール。どちらもプロ5年目でキャリアハイとなる数字ですが、自分の中で何かを大きく変えたわけではありません。「もっと上手くなるにはどうすればいいのか」と24時間サッカーに集中し、これまで通り1日1日、試合と練習で全力を出し切ってきました。それが、結果につながったと思います。中心メンバーとしてシーズンをフルにたたかうことができたことも、今後のキャリアにおいて大きな自信になるはずです。


Q.コロナ禍による影響はありましたか?


:感染が拡大し始めた当初はチーム練習を行えず、選手個々人が家でトレーニングを行わなければいけませんでした。そのうえシーズン開幕が4カ月も遅れ、開幕後もしばらくは無観客の試合が続きました。

そんな状況下でも、目指すところは一切ぶれませんでした。幼い頃からの夢は、朝鮮代表としてW杯に出場すること。目標に向かって「今できること」を探そうと、ピラティスのインストラクターやフィジカルトレーナ-とオンラインでつながりを持ち、リモートレッスンを受けながら自分の体と細部まで向き合いました。


:ピラティス体幹トレーナーとして活動している私も、今回を機にリモートでのレッスンを始め、これまで指導にあたってきた東京朝高バレー部にリモートトレーニングを導入してみました。生徒たちにとっては初めての試みで慣れないようすも見られましたが、新しい経験が刺激になったのではないでしょうか。

この間、さまざまな競技の選手たちが通うかかりつけの治療院で、浩康の名前を何度か聞きました。「ブラウブリッツ秋田のDF本当にいいよね」と。それがきっかけで浩康の存在を知り、同じ同胞として力をもらえました。第一線を退いた自分より、現役選手が周囲に与える影響力の方が大きいと思います。だからこそ、浩康にはよりいっそうの活躍を見せてほしい。


:コマッスンミダ。改めて昨季を振り返ると、チームが開幕から首位を走り、無敗記録を維持する中で「いつ負けるのか」というのが周囲の関心事でした(最終的に開幕から28試合無敗を維持。2019年シーズンを含め、Jリーグ最長となる30試合無敗を記録)。対戦相手も毎試合、秋田の強みを消すような戦術を用いてきました。

プレッシャーのかかる環境でしたが、自分はむしろその状況を楽しむことができました。なぜなら、そのようなシチュエーションは首位に立つ自分たちしか味わえないからです。新シーズンからJ1の舞台で勝負することになりますが、レベルの高い舞台で自分の実力を試せることに今からワクワクしています。


:「プレッシャーを楽しむ」という感覚は、素直にすごいと思います。自分の場合、現役時代にスポンサーに活動をサポートしてもらって以降、その期待に結果で応えられなかった苦い思い出があります。当時は周囲のことを考えるあまり、自分にフォーカスできていませんでした。多くの人が自分と他人を比較しがちですが、同じレールや人生を歩んでいる人はいません。評価ばかり気にするのではなく、もっと自分自身に集中して、一瞬一瞬ベストを尽くすことを心がけてほしい。その積み重ねによって将来が大きく変わってくると思います。


:まさにその通りだと思います。秀京さんの話を聞きながら思い出したのは、「ウサギと亀」の話です。山の頂上までかけっこの勝負をした時、足の早いウサギは亀のことばかりを気にかけていました。ですが、亀は自分の目指すべきゴールだけを見据えて、黙々と走り続けました。その結果、亀に軍配が上がりました。自分も同様に、競っている相手より「自分が今、何ができるか」を常に考え、一心不乱に走り続けたい。


Q.お二人が目指すところは。


:昨年と同じ6人制男女混合バレーボールの世界大会が、来年には沖縄で行われます。それにコロナが収束すれば、今年5月にロシアで世界最高峰の6人制混合バレー大会が行われる予定です。そこに同胞選手たちを参加させることができればと考えています。

「世界に羽ばたきたい」という同胞選手がいれば、バレー界で築いた人脈を生かし、目標実現の手助けをすることだってできます。6人制バレーだけでなく、ビーチバレー、そして26年冬季五輪で正式種目入りを目指しているスノーバレーにも活躍の場を広げてあげたい。

昨年の6人制バレー世界大会で出身も世代も違う同胞たちがつながれたように、さまざまな機会を設け、人々に希望や力を与えたい。人と人とをつなぐ「架け橋」になれれば嬉しいです。


:過去には「ウリハッキョに通うと将来の選択肢が狭まる」といった声が聞かれましたが、現在は可能性が無限に広がっています。「在日だから」と夢を諦めるのではなく、「在日だからこそ」できることがあると考えています。

今季は、新天地となるJ1の横浜FCで定位置を確保したいです。J1で認められる選手に成長し、朝鮮代表としてW杯に出場すれば、多くの人々に同胞社会やウリハッキョのことを知ってもらえるはずです。少年時代、J1や朝鮮代表で活躍する安英学さんから大きな夢を与えてもらいました。今度は自分が活躍して後輩たちに可能性を示す番です。

-朝鮮新報より提供-