第60回「横浜市長杯争奪 日朝親善サッカー横浜大会」〜歴史を紡ぐ〜


 10月23日/24日にかけて「第60回横浜市長杯争奪 日朝親善サッカー横浜大会」(主催:一般社団法人横浜サッカー協会・在日本朝鮮人神奈川県体育協会)が、三ッ沢陸上競技場で行われた。

 一度も途切れることなく受け継がれてきた歴史ある本大会。記念すべき「第60回目」は、日朝の小学生から社会人までがピッチに集い、熱い試合を繰り広げた。

 大会では「在日DreamTeam vs 横浜シニアO−40」がスペシャルマッチとして、「横浜猛蹴 Legend vs FC KOREA」がメインマッチとして、マッチメイクされた。

 大会当日の三ツ沢陸上競技場には、大会に出場する選手達の勇姿を一目見ようと多くの学生、保護者、学校・サッカー関係者がピッチを眺めた。

 大会のスタートを飾った第一試合目は、ワイルドイレブンと神奈川朝鮮蹴球団が対戦し、両チームともに拮抗したプレーを見せ、「0−0」の引き分けとなった。
 第二試合目として行われたスペシャルマッチでは、在日Dream Teamと横浜シニアO−40が対戦。レジェンドたちの魂と経験豊富なプレーが発揮され、「4−0」で 在日Dream Teamが勝利を収めた。

 今回 在日Dream Teamの発起人となった、元朝鮮代表 安英学氏(Junistar Soccer School代表)は、「在日DreamTeam相応のチームを結成させたかったので、一つはこれまで同胞として気持ちを持ってサッカーに取り組んできた選手。もう一つは未来を担う学生達に何かメッセージを伝えられる選手。を条件に責任を持ってチームを組ませてもらった。また、試合を見にきてくれた学生たちに何かを伝え刺激を感じてもらえるように、前座試合という枠組みではなく、真剣勝負のつもりで臨んだ。横浜シニアO−40の方々の本気の姿勢のおかげもあって、とても良い試合になり満足している」と語った。

 また、在日Dream Teamの一員としてフル出場を果たした 同じく元朝鮮代表 李漢宰氏(FC町田ゼルビア クラブナビゲーター)は、「呼んで頂いたからには元プロサッカー選手としての姿勢を見せようと、1ヶ月前から体作りに取り組み試合に臨んだ。また、学生たちに勇気・希望・喜びを与えなくてはいけない責任ある身としてプレーした。全選手が魂のプレーを出すことが出来たと思うし、学生たちにはそういった気概を引き継いでほしいと思っている。そして、サッカーに国境はない。サッカーを通し共存・共有出来ると信じているので、この意義ある大会を通して感謝の気持ちを育み、全力でプレーすることの大切さを学んでほしい」と語った。

 大会初日目の最後となった、メインマッチ FC KOREA vs 横浜猛球Legendは、FC KOREAがスタートダッシュに成功し2得点を上げるなど、優勢に見えたが、横浜猛球Legend が素早い修正とチームを一丸とさせた強い気持ちを前面に出し、見事逆転に成功。「4−2」で横浜猛球Legendが勝利を収めた。

 横浜猛蹴Legend監督の金子 祐輝氏は、「毎年負けているので、今年は絶対に勝つという意気込みで臨んだ。早い段階で2失点をしてしまいどうなるのかとも思ったが、そこからチーム一丸となり戦えたことが、良い内容と良い結果に繋がったと思う。また、60年続いている歴史ある日朝親善大会ということで、今後も積極的に交流していき、意義のある協力関係を築いていければと思う」と語った。
 大会二日目は、これからの未来を担うであろう小学生から高校生までの「次世代」たちが試合を行った。
 U-10カテゴリー同士の対戦となった大崎サッカークラブ vs 神奈川コリアU-10 の試合は、神奈川コリアが「2−1」で勝利。U-12同士の対戦となった六浦毎日SS vs 神奈川コリアU-12 は、「5−1」で六浦毎日SSの勝利となった。

 最高の環境でピッチを走り回った少年少女たちは、時折笑顔を見せながら親交を図ったが、試合が進むに連れその熱量は高まり、雰囲気は公式戦さながらであった。また、応援に駆けつけた保護者たちも子供たちの一生懸命な姿を目の前にすかさず声援を送った。

 この日 対戦した少年少女たちは今後様々な道に進むだろうが、本大会を通して得た貴重な経験・思い出は決して色褪せることはないだろう。
 第二試合目は、横浜Y.S.C.Cジュニアユース vs 神奈川朝鮮中高中級部サッカー部が対戦し、両者ともに高い技術力を発揮した。ディフェンスラインから丁寧にパスを繋ぐことで相手のプレッシャー網を掻い潜り、ボール保持者に対し積極的にサポート・追い越しの動きを見せることで、数的優位を作り出す臨場感ある攻撃が両チームともに特徴的であった。
 試合は横浜Y.S.C.Cジュニアユースが「2−0」で勝利。試合終盤までに走り切り、自信を持って自らのスタイルを出し切った互いのチームに、存分の拍手が送られた。

 本大会ラストマッチは、高い期待が寄せられるなか、神奈川県立光陵高等学校サッカー部 vs 神奈川朝鮮中高級学校高級部サッカー部の試合が行われた。

 フィジカル能力や技術力の高い選手を揃える神奈川朝高サッカー部は、全選手が自身の役割をしっかりと理解しハードワークを徹底する。自陣ゴール前では相手に簡単にプレーさせず、攻撃時は積極的にスペースを突き、時にはドリブルやオーバーラップからサイドをこじ開けるプレーが見られ、流動的な攻撃から相手ゴールに迫った。一方、県立光陵高校サッカー部も、1対1に必死に食らいつき幾度のカウンターから攻撃を仕掛けた。
 また、ハーフタイムには今シーズンから横浜FC(J1)で活躍する韓浩康選手(ハンホガン/28歳)が応援に駆けつけ、「ミスやトラブルなどといった様々なアクシデントがサッカーには起こり得るが、全力でプレーすることを心掛け強い気持ちを持ち続ければ可能性は切り開ける」と、激励の言葉を送った。
 試合は神奈川朝高サッカー部が持ち前の高さを活かしたセットプレーから先制。その後も観客の声援に応えるべく、攻撃の手を緩めなかった神奈川朝高サッカー部は、4得点の追加点を上げ「5-0」で試合を終了させた。
 「横浜市長杯争奪 日朝親善サッカー横浜大会」は成功裏に幕を閉じた。在日Dream teamを含めたレジェンドから、これからの未来を担うべき次世代たちが一同に集まり、サッカーを通じて国境を超え、サッカーという「一つの文化」がそれらの価値を生み出し、60回という歴史を紡いできた。
 真剣勝負さながらに“魂”のこもった姿勢を見せた大人たちに次世代は何を学んだのか。次世代たちの溌剌とした表情にこれからの未来を守るべき大人たちは何を誓ったのか。
 
 社会が目まぐるしく変化してくゆくなか、本大会の意義だけは決して変わることはない。
 そして、第60回大会は今後の歴史を紡いでいくうえで非常に大事な第一歩を踏むことに成功した。