「飛躍の年にしたい」。確かな手応えのもとプロ2年目を迎える ガイナーレ鳥取 文 仁柱選手(ムン・インジュ/24)。「次は若い世代が…」


 今季から背番号6を背負い「中心としての自覚を持ってプレーしたい」と話す、文 仁柱選手(ムン・インジュ/24)。

J3リーグ開幕戦では、左サイドバックとしてスタメン出場(79分までプレー)し、チームの勝利に大きく貢献。「充実している」と、確かな手応えを感じていた。 

今回はそんな文選手に、プロ1年目であった昨シーズンに対する想いと、「飛躍の年にしたい」今シーズンの意気込みを聞いた。



自分の強みと、求められること


ーーまずはプロ1年目であった昨シーズンを振り返って、どのような印象を抱きますか?


文:「プロの厳しさを知った1年間でした。ガイナーレ鳥取に入団した当時は、最初からスタメンで試合に出てチームに貢献することをイメージしていましたが、そう簡単ではなかったです。試合に絡めるようになったのは夏頃からで、最終的に15試合に出場し1ゴール3アシスト。正直、満足はしていませんし、良いシーズンだったとは言えません。

でも、ポジティブに捉えると試合に出れなかった期間があったにせよ、その時にめげずにやり続けたからこそチャンスが来たと思っているので、そこに関しては自分のなかでの成果だと捉えています」


ーー試合に出場できないなか、姿勢を崩さないのは難しいことだと思います。


文:「心のなかでは自分を使ってほしい。自分が試合に出たらやれるっていう気持ちを持ってトレーニングに励んでいました。あと意識したことは、矢印を自分に向けることです。監督がやりたいサッカーはどんなサッカーで、自分に何を求めているのか。という部分を監督やコーチングスタッフの発言を通して理解しようとしました。自分にも得意なことがあって好きなプレーがありますが、それと求められていることがマッチしていなければ、試合には出れないので、監督の求めるサッカー、コーチングスタッフの持っているイメージを常に考えながらトレーニングに臨めていたんじゃないかと思います」


ーー優先順位を「やりたいこと」よりも「求められること」へ切り替えたということですか?


文:「優先順位を切り替えたというよりも、それらを受け入れて取り組むことによって、自分の幅が広がるという納得感のもと意識を変えたという感じです。自分の良さは無くしたくないですし、そう取り組むことで、無くならないと思います」


ーーなるほど。例えばどのような意識の変化がありましたか?


文:「自分はどちらかと言うと、使う側で、ボールを出した後もサポートやビハインドに入ることが多かったり、フリーランニングも正直多くなかったと思います。ただ、監督はボールと人が前に出ていく攻撃的なスタイルなので、チームとしての戦い方を考えたときに、使われる側として前に出ていけるのか、出ていけないのかという点は重要だし、そこに取り組むことでプレイヤーとしての幅も広がると教えてくれました。また、そういった監督が求めることというのは、自分が今までやってこなかった部分でもあります。例えば、これまで守備に対しても意識が強くありませんでしたが、ボールに強く行くだったり、より効果的な立ち位置に立ち、複数人で奪いに行くなども考えてプレーするようになりました」

サイドバックへのコンバートと手応え。「内に入ることも意識している」


ーーサイドバックとしての出場機会が多いですが、そこについてはどのように考えていますか?


文:「昨シーズンのトレーニングマッチの際にサイドバックとして初めて起用され、そこから徐々に増えていきました。最初は驚きもありましたが、どんな形でも試合に絡みチームに貢献することが大事だと思い、出来ることをやっていこうという気持ちで臨みました」


ーーサイドバックとして意識していることはありますか?


文:「最近は内に入ってプレーすることも意識しています。自分が内に入って中盤の選手とゲームメイクやチャンスメイクに関与したり、状況によっては外のレーンでプレーしたりしています。いまのサイドバックは外だけじゃなく、内に入って中盤の役割もするので、その両方が出来れば、今後どんなスタイルやコンセプトのもとでも適応できる選手になれると思っています。自分はゲームメイクやチャンスメイクに自信を持っているので、そこでもアピールをしていきたいです」

「飛躍の年にしたい」。今シーズンの確かな手応え


ーー今シーズンのキャンプでの手応えはいかがですか?


文:「キャンプで良い準備が出来たと思っています。特に今シーズンは経験のある選手たちがたくさん加入し、プレーから私生活まで学ぶことが多いです。そういった選手たちのおかげで、キャンプ段階での完成度が高く、充実していました。自分のコンディションもキャンプ通して上がった実感があります」


ーー開幕戦は3−2で勝利。左サイドバックとしてスタメン出場し、チームの勝利に貢献しました。振り返ってみていかがですか?


文:「試合の入りはチームとして落ち着いていた印象がありますし、自分たちの良さを出せたと思います。経験のある選手たちが試合をうまくコントロールしてくれて、特に前半は主導権を握りながらゲームを運ぶことが出来たと思います。

個人的な部分では、課題が多くもっと自分の強みを活かしていきたいですし、より高い位置でボールに絡み、チャンスメイクすることで、チームに貢献出来ると思っています」


ーーまだ先は長いですが、今シーズンの目標をお聞かせください。


文:「飛躍の年にしたいです。まずは試合に出続けて、結果を残す。あとは、背番号が変わったことも含め、自分が中心だという自覚を持ってチームに貢献し、クラブの目標であるJ2昇格を目指し、戦っていきたいです」


「これからは若い世代が出ていかないといけない」。


ーーありがとうございます。では最後に、文選手の今後の目標を教えてください。


文:「目標かは分かりませんが、これからは若い世代がもっと出ていかないといけないという気持ちがあります。

自分は小学校から大学まで朝鮮学校で育ち、安英学さん、李漢宰さん、鄭大世さんなど、在日同胞選手として第一線で活躍する選手たちに憧れを抱いてきました。そんな選手たちが少しずつ引退されていくなか、次は自分たちが台頭していかないといけません。

自分の職業は有難いことにも、活躍すればするほど、直接的に感動や勇気を与えられるポジションだと認識しています。いま、朝鮮学校でプレーする選手たちに、こんな選手もいるんだぞと分かってもらえるよう、頑張っていきたいです」