FC大阪【朴利基×李在根】大阪で生まれ育った2人の在日コリアンフットボーラーが追求するサッカー観とは…


 大阪から3クラブ目のJリーグ入りを目指すFC大阪(JFL所属)で、朴利基と李在根という2人の在日コリアンフットボーラーがプレーしている。
 朴選手は朝鮮大学校サッカー部で主将を務め、関東2部リーグへの昇格に貢献。2015年にはFC琉球に入団し、4シーズンを通して目覚ましい活躍を見せた。FC琉球での最後のシーズンとなった2018年にはチームのJ3優勝に大きく貢献した。


FC琉球時代に得た成功体験
 

 FC琉球は積極的にボールを保持するパスサッカーを展開し、朴選手はその魅力的なパスサッカーの中で自分のポジションを見出してみせた。そして、今までに感じたことのないようなサッカーの楽しさと出会った。技術力の高い才能ある選手がひしめくなかで、朴選手の出し惜しみしない運動量とアグレッシブなハードワークがチームを活性化させた。朴選手が闘い、走るおかげで技術力の高い選手達がより活きるのだ。

 
 朴利基「あの時はアグレッシブなサッカーというのが琉球のサッカーだったので、皆がバンバン動いて流動的にポジションを入れ替えながらというパスサッカーをやってました。だからこそ相手も掴みづらかったんやと思います
 
 朴選手の持ち味はハードワークでチームに忠誠するだけではない。たしかな技術力を活かし、守備陣と攻撃陣をつなぎ合わせるリンクマンとしての役割もこなすことが出来る。更に特徴的なのがその得点力の高さだ。朴選手は5年間のキャリアの中で得点を記録していないシーズンが無い。コンスタントに得点を取り続けている。高知ユナイテッドでプレーした昨シーズンは11試合で8得点を記録しており、FC琉球時代では『ここぞ』という大事な場面で値千金の得点を叩き込むことがとても多かった。何故、中盤選手として汗をかき、闘い、更にはリンクマンとしての役割もこなしながらコンスタントに得点に絡み続けることができるのだろうか。
 
 朴利基「あの当時はパスを出してくれる技術力の高い選手がほんとにたくさんいたので、味方選手にスペースを作り出すために裏に走り抜けてみたりすると、そこにパスが出てきていたので、惜しむこと無く走れましたね。あとはJでのゴールのほとんどがワンタッチゴールなんですけど、いかにゴールの近くに顔を出して、ボールがこぼれてきそうな所、パスが出てきそうなポジションに走り込めるのかということは意識していました


大阪での再挑戦
 朴選手は新たな挑戦に挑むために高校・大学と共にプレーした一つ下の後輩である李選手がプレーするFC大阪に移籍した。今までの超ポゼッションサッカーとは少し異なるサッカースタイルのなか、自分をいかにチームにマッチさせることが出来るのか日々模索している。
 
 朴利基「今度は僕がそういったパサーの役割を果たさないといけないのかなと思っています。だから飛び出す回数は減りましたね。その分、周りを注視しながらチームのバランスが崩れないようにする側に意識が変わり始めています

 朴選手と同じくこのFC大阪で日々奮闘するGKこそが李在根選手だ。今年で2年目となる李選手はそのキャラクターを活かし、2年目とは思えないほどの勢いでチームの中に溶け込み、ムードメーカーとしても存在を発揮している。
 李在根「GKというポジションはコーチングが多いポジションです。チームメイトとの信頼やコミュニケーションがあってこそのコーチングやと思いますし、GKにとってはチームに溶け込むということはめちゃくちゃ大事だと思います
 
 FC大阪はクラブのホームタウンを東大阪に置いている。サッカーで結果を残す事がクラブにとって最も大事なことではあるが、決して間違ってはいけないのは結果を残すことが目的ではないということ。サッカーで結果を残すことはあくまでも手段なのだ。サッカーで東大阪の人々を魅了し、スポーツの力をもって大阪や東大阪の地域振興を目指す。その理念に李選手は共感している。李選手はサッカーのみならずオフザピッチでの発信にも精力的だ。
 
 李在根「生まれ育った東大阪への愛はめっちゃあります。だからこそこのチームを盛り上げたいし、Jに昇格したい。セカンドキャリアも自分から東大阪をもっと宣伝出来るようにと考えてます
 
 李選手が持つ専売特許はそのパーソナリティだけではない。屈強で図太い身体を活かした球際の強さと、フィールドプレイヤー勝りの足元のパワーや技術を持っている。李選手が持つサッカーに対する価値観は朴選手と似たような側面があった。


追求する“サッカー観”は共有できている
 李在根「やっている人と見ている人が楽しいと思えるサッカーがしたい。そこを追求すれば追求するほど難しさは増すけど、僕はそこを追求したいし、そういった面でサッカーは本当に難しく、楽しいです
 
 李選手は朝鮮大学校を卒業後、2016年にFCKOREAに入団。社会人リーグという特殊な環境に揉まれながらも自身の夢を諦めることはなかった。そして、2018年にその待望の夢が叶う。テスト生から見事、J3藤枝MYFCへの契約を自力で勝ち取ってみせたのだ。藤枝MYFCでのプレーはわずか1年間ではあったが、あの経験が今の自身にとっての財産になっているのは確かだ。何よりもそこでのサッカーが楽しかったと言う。

 李在根「やっぱりプロはレベルが高かったし、毎日の練習が刺激的でしたね。GKにも足元の技術とかポゼッションをするにあたっての戦術眼が求められる世界。今の僕のサッカー観を形成させてくれたのはあの一年間だと言っても過言ではないですね
 
 包み隠さず話をしてくれる李選手に対して静かに頷く朴選手。学生時代から共にプレーし、私生活でも一緒に時間を過ごすことも多かった。きっとこの2人には2人だけの関係性があり、今はお互いの存在が心強いのではないのか。その問いに対して「そんなことはない」と、両者ともに異口同音ではあったが、そんな2人が同じピッチで活躍する姿を必ず見たいと思った。

  

 李在根「自分が試合に出て、このチームでJに昇格し、東大阪を盛り上げたいです
 
 朴選手は中盤でゲームを司り、李選手は後方からチームを支える。この2人のホットラインからポゼッションサッカーが繰り広げられるところが見たいし、大阪で生まれ育った在日コリアンフットボーラーが東大阪を本拠地に置くFC大阪で活躍することを大いに期待したい。

 そして、自身のサッカーキャリアに真摯に向き合い追求する2人のフットボーラーを応援し続けたいと強く思う。